「熊の肉ってどんな味なんだろう?」「熊の肉ってどう料理すればいいの?」そんな疑問に、1級お肉博士の知識を活かしてお答えします。
野生味あふれる熊肉は、その独特な風味と栄養価の高さからジビエ愛好家の間で人気が高まっています。しかし、一般的にはまだ馴染みの薄い食材でもあります。
この記事では、熊肉の魅力と料理法をご紹介します。あなたもきっと熊肉が食べたくなる?かもしれません。
熊肉の美味しい部位とその魅力
ジビエとしての熊肉の魅力
熊肉は、ジビエ料理の中でも特別な存在です。その魅力は、独特な風味と栄養価の高さにあります。特に山の中で木の実をたっぷりと食べた熊は、イベリコ豚のようなナッツ香を感じられる深みのある脂の味わいが特徴です。
また、熊肉は高タンパク・低脂肪で、鉄分やビタミンB群も豊富に含まれています。
ジビエ愛好家の中では、その独特の風味と栄養価の高さから熊肉は「森の王者の肉」として珍重されています。
最高級部位のロース
熊肉の中でも、ロースは最高級部位にあたります。その理由は以下の通りです。
1.やわらかさ:熊の背中から取れるロースは、適度な脂肪が混ざり、熊肉の部位の中で一番やわらかいと言えるでしょう。
2.旨みの凝縮:ロースは熊肉の特徴的な旨みと風味が最も凝縮された部位です。脂のナッティな香りと赤身の濃厚な味わいを存分に楽しむことができます。
3.多様な調理法:ロースは他の部位に比べ、やわらかいため厚めにカットしてステーキやローストはもちろん、薄切りにしてすき焼きなども。
ロースの調理のコツは、じっくりと弱火で火を通すことです。難しいですが、火の通ったミディアムレアをイメージすると旨みを最大限に引き出します。
上質な赤身のモモ肉
モモ肉は、熊肉の中でも特に赤身の部位で運動量が多い部位のため引き締まった肉質です。
その特徴と魅力は以下の通りです。
1.濃厚な味わい:赤身が多いため、熊肉特有の濃厚な味わいを強く感じることができます。
2.高タンパク・低脂肪:脂質が少なく、ダイエットや筋トレに励む方にもおすすめ部位です。
3.煮込み料理に最高:細切りや粗めの挽肉にしてカレーやシチュー、ラグーソースとしても濃厚な旨みを味わえます。
モモ肉を美味しく調理するコツは、長時間低温でじっくり煮込むことです。これにより、硬いスジなどのゼラチン質が溶け出して肉の旨みも増します。
熊モモ肉のラグーソースのパスタはめちゃくちゃ美味かったです!
熊肉の美味しい調理法
熊肉の魅力を最大限に引き出すには、適切な調理法が欠かせません。ここでは、熊肉を美味しく楽しむための3つの調理法をご紹介します。
ステーキで味わう熊肉
ステーキは熊肉本来の味わいを堪能するのに最適な調理法です。
1.熊肉(ロース推奨)を室温に戻し、塩胡椒をしっかり目に振り下味をつけ、フライパンを高温に熱してサラダ油をひきます。
2.熊肉を入れ、強火で表面をしっかりと焼き付けます(各面1~2分程度)。その後、火を弱火に落とし、肉の中心部までじっくりと火を入れます。
3.熊肉は、牛肉や豚肉に比べ肉の繊維が粗く、旨みの詰まった肉汁が流出しやすいため、肉の表面を焼き固めた後はすぐに切らずに、必ず5~10分ほどアルミホイルなどで包んで休ませましょう。そうすることにより、中までしっかりと火が通ります。
熊肉には、甘めのソースがよく合います。ハチミツやベリー系を使った赤ワインベースのソースは特にマッチします。
熊はあの人気キャラクターのイメージ通りハチミツが大好きで、ヤマブドウなどのベリー系果実も好んで食べているため、これらを合わせた甘い味わいのソースと相性がバツグンです。
醤油ベースにハチミツを合わせたソースは白飯いきたくなる旨さですよ!
すき焼きで楽しむ
すき焼きも、熊肉の旨みを引き出し絶妙にマッチする調理法です。割り下で使う醤油や酒も熊肉との相性が良いです。
1.熊肉(ロース、バラ推奨)を薄切りにして、白菜、長ネギ、きのこ、春菊などの野菜を用意します。割り下は少し甘めにするのがおすすめです。
2.鍋を熱し、熊の脂(なければ牛脂)を引き熊肉を軽く焼きます。その後に割り下を加え、野菜と煮込み、最後に生卵を絡めて食べます。
熊肉は牛肉に比べ、繊維が粗く硬いため、できるだけ薄めにスライスするのがポイントです。
山椒や柚子皮を加えると、熊肉の臭みを抑え、特有の香りを引き立たせます。
東北地方のマタギと呼ばれる猟師たちは、すき焼きで食べるのが大好きだそうです。
和の味付けで楽しめるすき焼きは、熊肉初心者の方にもおすすめの調理法です。
とにかく山椒がバツグンに合いますね!
しゃぶしゃぶでさっぱりと
熊肉のしゃぶしゃぶは、その独特の風味をさっぱりと楽しむことができる調理法です。熊肉はアクがとても多く出るため、しゃぶしゃぶでアクを落とすことができ、さっぱりと美味しく楽しめます。
1.熊肉(モモ肉を薄切りで)を用意し、野菜は出来れば山菜やキノコを合わせると風味が引き立ちます。出汁は昆布や椎茸など熊肉に合うものを用意しましょう。
2.出汁を沸騰させ、火を少し弱めます。その後に熊肉を一枚ずつ、サッと出汁にくぐらせます。(5~10秒程度)
しゃぶしゃぶは、熊肉のアクを落として繊細な味わいを楽しむことができ、脂肪分も落とせるためヘルシーな調理法です。
ポン酢やゴマだれはもちろん、山椒を効かせても熊肉特有の味わいを楽しめます。
ヒグマとツキノワグマの違い
日本国内で捕獲される熊は、主にヒグマとツキノワグマの2種類です。両者は見た目や性質だけではなく、肉質にも大きな違いがあります。
ヒグマの肉の特徴
ヒグマの肉は、その大きさと生態から、独特の特徴を持っています。
肉質は、筋肉質で繊維が太く粗めであり濃厚で力強い味わいです。特に冬眠前はたくさんの食料を食べているため、脂肪分が多く風味豊かです。
私がレストランでヒグマのローストと煮込みを食べ比べた時に、ヒグマの肉は調理法によって大きく味わいが変わるなと感じました。
特に、長時間煮込むことで、肉が柔らかくなり、口の中でホロホロとほぐれ旨みが増します。
ツキノワグマの肉の風味
ツキノワグマの肉は、ヒグマに比べてやや柔らかい肉質で、甘みがあり繊細な味わいです。
脂肪はヒグマほど多くありませんが、色が白く上質な脂が特徴です。
こちらもレストランでモモ肉のローストを食べた時に、ヒグマと比べ柔らかく甘みも感じました。ヒグマは部位によっては噛みきれないこともありましたが、ツキノワグマはサクッと噛みきれました。
ツキノワグマは特に脂が甘いですよ!
熊肉の寄生虫と安全性
熊肉の美味しさと栄養価の高さについて語る一方で、安全性に関する懸念も無視できません。
特に、寄生虫の問題は熊肉を扱う上で最も重要な課題の一つです。
トリヒナ症のリスク
熊肉に関連する最も深刻なリスクは、トリヒナ症です。
原因は旋毛虫という寄生虫により、腹痛や下痢、発熱、全身の浮腫、心不全などの症状があります。
感染経路は、寄生された家畜や動物などの肉を、生や乾燥、不完全加熱の状態で喫食した場合に感染します。
日本国内では主に熊肉を不完全加熱で喫食したことが原因で食中毒の発生が多いようです。
安全な熊肉の調理方法
最も重要なことは、十分な加熱です。
トリヒナは低温に強いため、冷凍しても完全には死滅しません。肉の中心部を75℃で1分間以上の加熱を必ず行いましょう。クッキング温度計があれば理想的ですが、ない場合も多いかと思います。
その場合は、切った断面が薄くピンク色でツヤがなく、肉汁が透明であることを確認できれば火が通っていると判断できるでしょう。
もう一つは、調理器具の使い分けです。
熊肉には高確率で寄生虫が感染していることから、使った包丁やまな板で他の食材を切ることは必ず避けましょう。
使用後の調理器具などは十分に洗浄し、できれば熱湯消毒もすると安心です。
熊肉に限らず、特に野生鳥獣の肉は寄生虫や食中毒菌などを保有していますので、鮮度にかかわらずジビエは決して生で食べないようにしましょう。
お店でタタキやルイベなどのメニューがあっても食べない方がいいかも……。
まとめ:熊肉の美味しい部位とその魅力とは
熊肉は、まだまだ一般的ではありませんが、とても美味しく栄養価の高いお肉です。
冬眠前に山にこもって、ドングリやクルミなどの木の実、ヤマブドウやアケビなどの果実をたっぷりと食べた熊の肉は最高級の肉質になります。
私が思う特に美味しい部位は「ロース」です。腰から肩の背肉にあたりますが、適度な運動量で肉の繊維も細かく、程よい柔らかさで赤身と脂の旨さを味わえます。
ただし、家畜と違い個体差が大きく、食べているものも異なるので肉の状態の見極めは難しく、状態に合わせた調理をすることでより熊肉の美味しさを感じることができるでしょう。
熊肉に興味を持たれた方は、お取り寄せで自宅で調理するのもよいですが、ぜひ信頼できる専門店や料理人のもとで、安全に配慮された熊肉料理をお試しください。
独特な味わいと栄養価の高さや意外な美味しさにきっと驚かれるでしょう。
背脂の厚みがある熊肉ロースは最高級のお肉です!!